購入したズボンの裾が長かったとき、「自分で裾上げできたら…」と思う方も多いのでは?
ミシンを使わずに、手縫いで裾上げする方法を覚えておくと、洋服のお直しや、子どもの服づくりの仕上げなどに役立ちます。
今回は、手縫いでできる裾上げの種類と手順を解説します。ミシンやテープを利用した場合の方法もまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
手縫いで裾上げするメリット
手縫いで裾上げするメリットは、なんといっても針と糸さえあればできることです。
ミシンのように大きな音が出ないので、小さな子どもがお昼寝している隣でも、家族が寝静まった時間でも作業できます。
また、後で長さを調節したい場合でも、糸をほどきやすいというメリットもあります。
裾上げに用いられる手法
洋服の素材や用途によって縫い方を変えることで、生地を傷まないようにしたり、強度を高めたりすることができます。
裾上げに用いられる代表的な縫い方は、以下の5つです。
①たてまつり縫い
たてまつり縫いとは、糸を縦に縫う方法です。生地同士を密着させるように縫うため、強度が高まります。糸の色を生地と同じものにして、縫い目の幅を短く均等にすると、縫い目が目立ちにくくなりますよ。
たてまつり縫いの縫い方
縫い方
- 布の端を3つ折りにします。3つ折りの状態で一度アイロンをかけておくと仕上がりがきれいになります。
- 3つ折りを一度開き、折山の裏から針を刺し、折山の2mmくらい下から針先を出します。
- 3つ折りに戻すと、折山の少し下から針が出ているのがわかります。
- 糸が縦に整うよう、針を出したところの真上から2~3mmすくうように縫い、また折山の2mm下から表へ出します。
- 糸を引くと、縦に2mmほどのステッチが見えました。
- 同様に繰り返します。
- 完成しました。
反対側(表)からみると、斜めにステッチが入っています。
②流しまつり縫い(ななめまつり縫い)
流しまつり縫いは、糸を斜めに縫う方法です。
ステッチが目立たず、しっかりと縫い付けられるので、カジュアルな洋服をはじめ、ビジネススーツや制服などフォーマルな洋服の袖口・裾をまつる時にも用いられます。
また、斜めに縫うことで仕上がりが柔らかくなり、生地に動きを出したい時の裾上げに適しています。
詳しい縫い方については、こちらのページで紹介しています。
③千鳥がけ
千鳥がけとは、糸を交差させて縫う方法です。千鳥が連なって飛ぶように見えることから「千鳥がけ」と呼ばれています。
生地をしっかりと縫い付けられる方法ですが、かがり幅が大きいとほつれやすくなるので注意が必要です。あえてステッチを表面にして、飾りとして縫うこともあります。
千鳥がけの縫い方
縫い方
- 布の端を、3つ折りします。3つ折りの状態で1度アイロンをかけておくと仕上がりがきれいです。
- 3つ折りを一度開き、折山の裏から針を刺し、折山ぴったりに針を刺して表へ出します。
- 針を出した所(折山)から、下に約7mm右に5mmの所を、右から左に糸2本分くらいすくいます。
- 続いて、3つ折りのきわの布を、右から左に糸2本分くらいすくいます。
- 繰り返します。
進む方向と逆側から針を刺し始めるところが特徴的な縫い方です。
- 完成しました。
反対側(表)からみると、小さなステッチが見えます。
④なみ縫い
なみ縫いは、和裁・洋裁ともによく用いられる縫い方です。生地の表と裏をまっすぐ等間隔に縫うといった基本的な縫い方なので、初心者の方でも失敗しにくい方法といえます。生地の目と縫い目が平行になるよう意識して縫うのがポイントです。
詳しい縫い方についてはこちらのページでご紹介しています。
⑤返し縫い
返し縫いは、「ひと針進んで戻る」を繰り返す縫い方です。ミシンをかけたように一直線に見えるステッチが特徴です。
なみ縫いよりも少し手間がかかりますが、今回挙げた縫い方のなかでもっとも強度があるので、固い生地や作業着の裾上げに適しています。
詳しい縫い方についてはこちらのページでご紹介しています。
手縫いで裾上げする方法を紹介
それでは実際に、手縫いでズボンの裾上げをしてみましょう。
今回は、「流しまつり縫い」で裾上げする方法を解説します。
薄手や少し厚めのズボン生地では、3つ折りにして手縫いで裾上げをすると強度がアップします。厚手のズボンの場合は、2つ折りがおすすめです。
■所要時間:20分程度
必要な道具と材料
材料
- 裾上げする衣服(今回はズボンを使用)
道具
- 布切りバサミ
- 糸切りバサミ
- チャコペン
- まち針
- 定規
- 目打ち
- 厚紙
- 手縫い針(普通地用)
裾上げの手順
裾上げの手順
- 出来上がりの長さを決めます。
パンツを試着して、ちょうどよい長さになるよう、裾を折ります。
折った部分の長さを測ります。
今回は4cmでした。
- 生地カット寸法の線を引きます。
短くしたい寸法(今回は4cm)ぴったりではなく、縫い代の分を残してカットします。
下記の式を参考に、カット寸法を割り出しましょう。短くしたい寸法(4cm)-縫い代(2cm)=生地カット寸法(2cm)
縫い代は、デニムのような厚地~中肉地で2~3cmが目安です。
カット寸法を、パンツに書きこみます。(今回は2cm)
- 生地をカットしましょう。先ほど引いた生地カット寸法線の通りに、裾をカットします。
- 裾をカットできました。
- アイロン定規を作ります。
縦20cm×横10cmの厚紙を用意し、下の端から2cmの所に鉛筆かシャープペンシルを使って線を引きます。
- 裾を2つ折りします。写真のようにアイロン定規をあてて、端から2cmで折り、ぐるりとアイロンをかけます。
- 一周ぐるりと裾が折れました。
- 折った裾を一度開き、アイロンでつけた折山に生地の端を合わせて折ります。
- 1周ぐるりと折れました。
- 折り山をもう1度折り、3つ折りにします。
- 脇の縫い代をカットします。
厚い生地を3つ折りする場合、脇の縫い代部分は何枚も布が重なって厚みが増し、縫いにくくなるので、写真のように内側の縫い代をカットして、厚みを減らします。左右に開いている縫い代は、左右それぞれカットします。
※縫い代が重なったままでも縫えるような薄い生地の場合は、カットしなくても構いません。
- 3つ折りにして、待ち針で止めておきます。
- 縫い代の重なる股下側から縫い始めましょう。
- 3つ折りのきわの、ぬいしろが重なったところの織り糸を1~2本すくい、針先を折山に刺します。
- 縫い代の裏側を上にして縫っていきます。折山の裏から表に針を刺します。
- 糸を引きます。
- 再び3つ折りのきわの、布の織り糸を1~2本をすくい、針先を折山に刺します。 縫い目の幅は、3~5mmくらいに揃えましょう。
- 同じように繰り返してぐるりと縫い留めていきます。
- 1周して最後まで縫えたら、スタート位置の縫い代の裏側で玉結びします。
- 裾上げが完成しました。
表側からみるとこのようになっています。
手縫いでの裾上げをきれいにするポイント
ちょっとしたひと工夫で、仕上がりがぐっときれいになります。
手縫いで裾上げするポイントは、以下の4つです。
裾上げのポイント
- あらかじめ出来上がりの線を定規を使って生地の裏側に記しておく
- 裾をカットする時、縫い代は少し長め(3cm以上が理想)にとっておく
- アイロンを使ってしっかりと折り目をつける
- 洋服にもともと使われている糸の色・太さ・縫い方に合わせる
縫い代をカットしすぎて裾が短くなってしまうのを防ぐために、出来上がりの線を描いていくこと、縫い代を長めに取っておくことがポイント。
縫うときには、アイロンで折り目をつけておくことで、まっすぐ縫いやすくなります。
また、裾上げする洋服と糸の色や太さ、縫い方を合わせると、見た目の違和感がなくきれいに仕上がりやすくなります。
裾上げの方法はほかにもある
手縫いの他にも、裾上げをする方法はいくつかあります。
ここからは、ミシンを使った方法と、裾上げテープを使った方法をご紹介します。
ミシンは時短できれいな仕上がりに
短時間できれいな縫い目に仕上げたい場合には、ミシンを使った裾上げがおすすめです。ミシンを利用することで、手縫いよりも早く、縫い目が均一に仕上がります。ミシンは縫い方のバリエーションも豊富で、洋服に合った縫い方を選べることも魅力です。
以下の記事では、ミシンを使った裾上げの仕方をご紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
裁縫が苦手な方は裾上げテープもおすすめ
ミシンや手縫いが苦手という方は、裾上げテープを使用するのもおすすめです。アイロンを使って裾端を身頃の裏に接着できるため、チャレンジしやすい方法です。
ただし、商品によって粘着力や伸縮性に差があるため、洋服の素材に合わせてテープを選ぶことが大切です。
以下の記事では、裾上げテープを使った裾上げの仕方をご紹介しています。ぜひ、参考にしてください。
手縫いでミシンなしでもボトムスのお直しを
裾上げの縫い方にはいくつも種類があります。洋服によって使い分けることで、縫い目が目立ちにくくなり、長持ちします。
自分で裾上げができるようになれば、大きいサイズの服を買ったり、お下がりをもらったりしても、自分の身長に合わせて裾を調整できるので便利です。色々なシーンで使える裾上げの技術を、ぜひ習得してくださいね。