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世界を旅するように生きる、チリ出身のマクラメアーティストとの出会い

Rinnoane

オーストラリアのビーチタウンで出会ったマクラメ編み。

彼女との出会いは、オーストラリア、メルボルンの中心地からちょっと離れたビーチタウン、セイントキルダ。この街はちょっぴりヒッピーの香りがする、おしゃれで個性的なカフェやバー、レストラン、ショップが集まっている開放的な地域です。

ビーチタウン、セイントキルダ

Rinnoane

レトロな遊園地や劇場があったり、無国籍で自由で文化的な雰囲気があったりでとっても気に入って、私はこの地域に来てすぐメインストリートのAcland Streetに住み始めたのでした。バックパッカーの私にとっては家賃が非常に高かったのだけれど、イタリア人のルームメイトとボロアパートでルームシェアどころかベッドまでシェアして(しかもシャワーとトイレは他の部屋の人たちとシェア)、そこまでしてでも住みたいほど魅力的な街だったのです。

Acland Street

Rinnoane

そのAcland Streetを歩いていた時、路上でカラシ色の布を広げてアクセサリーを売っている女性を見かけました。それがリタ(仮名)でした。路上でアートを売っている旅人はこの街では珍しくないのですが、彼女の作品を見た瞬間、自然と足が止まりました。

マクラメ。彼女が作りながら売っていたのはマクラメ編みのアクセサリーでした。マクラメ編みとはひもやコードを編んでいき模様やアクセサリーを作る技法です。天然石を包み込むように編まれたネックレスや、小さい鈴がついたアンクレットなど、ボヘミアンな雰囲気のアクセサリーたちがこの街の雰囲気に溶け込んで、11月末の夏の日差しを浴びてキラキラしていました。

中でも気に入ったのがブラックのチョーカーと、ブルーのマクラメにクリスタルがはめ込まれたブレスレット。どちらを買おうかすごく迷って、何度も試着させてもらって、結局ブレスレットを買いました。

バースデーミラクル!

2日後、仕事からアパートへ帰るとルームメイトが笑顔で近づいてきて、小さなメッシュの袋を渡してきました。

「ハッピーバースデー!あなた明日誕生日でしょ!」

マクラメのブラックチョーカー

Rinnoane

全く予想していなかったタイミングでの誕生日プレゼント。オーストラリア中を一緒に旅している親友からのサプライズに浮かれながら袋を開けると、中に入っていたのはマクラメのブラックチョーカー!リタが作ったもの!2日前に私が買おうか迷っていたチョーカーを、ルームメイトが買っていたのです。

「私が買おうとしているのを見ていたの?どうしてわかったの?」「え!あなたこれ欲しかったの?知らなかった!路上のチリ人のお姉さんから買ったんだよ。」

信じられない!ルームメイトも偶然リタのマクラメアクセサリーが目にとまり、たまたま私のために黒のチョーカーを選んだのでした。

「きっとこのチョーカーが話しかけてきたのね。わたしを選んで!って。」

リタのこと。

このミラクルな話をどうしてもリタにしたくて、翌日またリタの元へ行きました。彼女はその日もまだ同じ場所でマクラメアクセサリーを作っていました。

そこで初めて、リタの出身地の話や旅の話を聞きました。リタはチリの首都、サンティアゴ出身。きれいなところで、特に雨上がりは空気が澄んで周りの山々がクリアに見えて気持ちが良いそうです。

旅を始めたのは5年前、ニュージーランドにワーキングホリデーで行ったのがきっかけ。当初は1年後に母国へ帰ろうと思っていたものの、思ったほどお金が稼げなかったのでより良い仕事を求めてオーストラリアに渡りました。オーストラリアでアボリジニ・アートセンターというところで働き、オーストラリア中を旅していたら、旅にどっぷりはまってしまいそのままインドへ。その後もアジアを中心に様々なところをまわるうち、タイでマクラメ編みに出逢いました。それまでは接客や農園など様々な仕事をしていたリタですが、マクラメに出逢ってからはマクラメ編み一筋で生活・旅をし始めました。

「いろいろな国に行くと、全く違った文化やアートに触れられる。だけどそれ以上に、そこで独特の経験をする事によって、自分自身をより深く深く知ることができるの。自分ってこういう状況だとこんな事考えてこんな行動するんだーとか、こんな面があったんだーとか。旅をしなければ気づかなかったことばかりよ。だから旅はやめられないの。」

リタの作品のそばには、パワーストーンの本も置いてありました。旅をしながら見つけた天然石も、マクラメで包み込むように編み(フレーム編み)、金具がなくてもアクセサリーにできます。

金属のパーツを全く使わないから、仕上がりもとってもナチュラルで温もりがあり、天然石のエネルギーそのままを感じられそうなマクラメ。

そしてワックスコードなどのひもさえあれば、セイントキルダの街角でも、タイのバックパッカー宿でも、グレイトバリアリーフの島でも、好きな所で作れるのがリタにとっても合っているのだそうです。

この会話をした日は、リタのオーストラリア滞在最終日でした。翌日の便でサンティアゴに帰るのだそう。

「5年ぶりに家族に会えるのが楽しみ!今年は家族とクリスマスを過ごせるわ。」

「クリスマスの後はどうするの?」

「まだ決めてない。もう少しチリにいたいと思ったらいるし、すぐ旅立ちたいと思ったら旅に出るわね。…でもきっとすぐ旅に出たいと思うでしょうね。」

リタ作 マクラメブレスレット兼アンクレット

Rinnoane

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ライター

Rinnoane
Rinnoane
エーゲ海に浮かぶクレタ島在住。趣味はアート&クラフト、音楽、旅、食。