小さなブーケを愛用のゴブレットに活けてみる。覚えたてのカリグラフィーでカードを書いてみる。毎日は、小さな「何か」の積み重ねで、一歩ずつ、素敵に近づいていきます。ほんの少し手をかけて迎える明日は、今日よりもっと愛おしい。これはそんな暮らしのシーンと、心がときめく瞬間を追いかけたショート・ストーリーです。
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クリスマスは毎年、友達と集まってパーティーを開いている。名付けて「クリスマス女子会」。いつもは持ち回りで好きなレストランを予約するのだけれど、今年は「おうち時間」を楽しもうとホームパーティースタイルに。持ち回りの順番は、わたし。お店を探す役目から、期せずしてホスト役を務めることになった。ワクワク半分、ドキドキ半分。こうとなったら、わたしらしくお部屋を飾りつけして、みんなをお迎えしなくては。
緑の葉っぱに包まれて「おうち森林浴」
まずは、ウエルカムの気持ちを込めてリースを作ろう。豊かな森の恵みが感じられるような、緑いっぱいのリースがいい。ユーカリとヒムロスギは、そんな願いを叶えてくれる頼もしいエバーグリーン。テーブルに並べると、グリーンの香りが立ちのぼる。すがすがしい芳香に、澱のように溜まっていた日頃の疲れが少しずつ消えていく。葉っぱに触れているだけでも心が落ち着いてくるのがわかる。
そういえば、クリスマスカラーの赤、緑、白には、それぞれ意味があるって聞いた。赤い実の赤は「愛」、常緑樹の緑は「生命力」や「永遠の命」、そして雪の白は「純潔」なのだそう。深い緑の彩りに、わたしが選んだ色は、赤。寒空のもと、枯れ枝をもたげる木々の間に鮮やかに色づく赤い実は、まるで自然からの贈りもののよう。
赤と緑の美しいコントラストにしばしうっとり。さて、どんなふうにデコレーションしていこう? 全体に散らすと華やかに、数カ所にまとめるとスタイリッシュに。これは以前参加したワークショップで、フラワーデザイナーの先生が教えてくれたこと。「初めての人でも様になるのは全体に散らすほう」。そのときに先生がつけ足した一言を思い出し、わたしは迷わず、リース全体に赤い実や松ぼっくりをちりばめた。
わたしの部屋に似合うのは、わたしのリース!
ウキウキと飾りつけをしながら、ワークショップでの出来事を思い出す。完成したリースの集合写真を撮ったとき、実にいろんな表情のリースがあった。同じ材料なのに、でき上がったリースは十人十色。この人のリースも素敵、あの人のもおしゃれ……。見比べると自分のリースがどうにも貧相に思えてきた。一瞬、落ち込みかけたときに、先生が一言。「他人の芝生は青く見えるもの。でも安心して。あなたのお部屋に飾るのはあなたのリースだけなのよ」と。その言葉を聞いて、しぼみそうな心が少しずつ開いていったのだった。
先生の言う通り、うちに帰って自分のリースを飾ってみると、あら、いい感じ。わたしの部屋にはわたしのリースがいちばん似合う。以来、自分の手から生まれたものが、一層愛おしく思えるようになった。
始まりも終わりもない輪の形が、永遠や平和のシンボルといわれるリース。そんな作りたての“幸せの輪”を玄関に飾る。これから始まるクリスマスが、幸せに包まれた時間になりますように。
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このストーリーの題材となった、クリスマスリースは、「森の贈りもの ユーカリとヒムロスギのリース」のキットとして、Craftie Homeで販売しています。赤い実で彩る「クリスマスレッド」と、冬景色を伝える「スノーホワイト」の2種類です。