旅をしながら活動している、ウィービング作家・講師のMaiさん。現在は東南アジアを活動の拠点にしているMaiさんから、前回の『タイ・チェンマイの日常と溶け合うカフェカルチャー』に続き、今回はチェンマイの手仕事のある暮らしの様子が届きました。
山や木に囲まれた土地、ものづくりのある毎日。自然とともに生活する中で育まれているチェンマイの手仕事の様子を、ちょっとのぞいていきませんか。
チェンマイはたくさんの「手仕事」に出会える街
今、私はタイのチェンマイに来ています。こちらに来る前から話には聞いていましたが、チェンマイの街はまさに手仕事から生まれたもので溢れています。今回は、のんびりとした人々の暮らしに自然と溶け込むチェンマイのものづくりについてお話しします。
チェンマイはタイ北部にある、タイ第二の都市です。古くからセラドン焼や絹織物などの手工芸が盛んで観光地としても栄えていましたが、今も素朴でチェンマイらしい手工芸品が街にあふれ、お土産品としても人気があります。
チェンマイは首都バンコクに比べると、時間の流れがゆったりとしていて人々ものんびりとした雰囲気です。ちょっとした事は「マイペンライ(気にしない)」と、自分のペースで暮らすチェンマイの人々に、手仕事のある生活はよくマッチしています。
いつの時代も色あせない山岳民族の手仕事
チェンマイは豊かな山々に囲まれた街です。その大自然の中で、今もカレン族やモン族といった山岳民族が数多く暮らしています。彼らの手によって生み出された色鮮やかな手芸品は、モン族市場など、チェンマイ市内のマーケットに運ばれます。
ビーズの工芸品や刺繍、織物など、手にとってみると、時間をかけて一つ一つ丁寧に作られていることがよく分かり、彼らのものづくりへの思いが強く伝わってくるようでした。
もちろん、機械のように大量に作ることはできません。でも、時間を惜しまずにこうして手を掛けることで、作ることの尊さを未来に伝えていけるんじゃないかな、と感じます。
オーガニック食品やハンドメイド作品が買える『ファーマーズマーケット』
チェンマイで最近じわじわと人気になっているのが、オーガニックフードやハンドメイド雑貨が販売される『ファーマーズマーケット』です。
中でも『JJマーケット』は感度の高いタイ人や外国人駐在員の間で話題になっています。JJマーケットは自然と仲良く暮らすチェンマイの生活が肌で感じられる、活気溢れるマーケットです。開放的な屋外で行われるこの市場では、新鮮なオーガニック野菜や他では手に入らない1点もののハンドメイド雑貨が並びます。
チェンマイは街中のいたるところに緑が溢れています。気候が穏やかなことが多いチェンマイなので、屋外のマーケットはとても気持ちが良く楽しむことができますよ。
アーティストヴィレッジ『バーン・カン・ワット』は、手仕事を現代へ繋げる架け橋
チェンマイでハンドクラフトを存分に味わいたいときは、ぜひ『バーン・カン・ワット』に足を運んでみてください。バーン・カン・ワットはアーティストヴィレッジとして古民家を移築して作られた、緑が茂った山の中にある商業施設です。
チェンマイの手仕事の心をコツコツと伝えていこうと、サステイナブルなものづくりをする十数店舗が村の仲間のようにお店を営んでいます。不定期で陶芸やアクセサリー作りのワークショップも開催されているようです。
ここを訪れる人たちの服装からも、手仕事やものづくりに対するこだわりが伝わってくる、そんな「ものづくりの以心伝心スポット」です。
チェンマイの孤児をものづくりで救う『バーンロムサイ』
HIVに母子感染した孤児たちの生活施設として、日本人の手によって1999年に設立されたバーンロムサイ。ものづくりやコテージリゾートの運営を軸に、子どもたちの生活サポートと自立支援を行なっています。
チェンマイ郊外の村で作られた植物染めコットンの軽やかなブラウスや、子どもたちと工房のスタッフが手作りした古布のお財布など、どれも素材とデザインにこだわって作られています。
バーンロムサイの活動を知った人たちが商品を購入したり宿泊施設に滞在したりと、寄付以外の自然な形で支援できるように工夫されているのも特徴です。バーンロムサイで作られたものは、オンラインショップや鎌倉にある直営店舗でも購入できるので、日本からの支援もできる仕組みです。
細部まで丁寧に作られた商品からは、子どもたちの自立に向けた真剣な思いがひしひしと伝わってきます。
チェンマイを魅力的にする、ものづくりのある暮らしを
チェンマイは古くからの伝統と、木のぬくもりが感じられる現代的なデザインが融合した街です。ゆったりとした街の雰囲気と、手仕事に時間をかける習慣が今でも残っています。それでいて、新しいものを取り入れていくクリエイティビティもあり。そのバランス感覚が、チェンマイの街を一層魅力的にしているのではないかな、と感じています。