ウィービング作家・講師のMaiさんは、旅をしながら活動をしています。現在は東南アジアを活動の拠点にしているMaiさんから、タイ・チェンマイのカフェカルチャーについてレポートが届きました。
日本のカフェとはちょっと異なる、タイならではのコーヒーとカルチャーのお話。ちょっとのぞいていきませんか。
チェンマイの日常に溶け込むカフェ
私が今いるタイ・チェンマイには街のいたるところにおしゃれなカフェが点在しています。どのお店も、スタッフやインテリアによって個性ある空間が作られていて魅力的です。
それらのカフェは、主に外国人が多く住む地域に集まっていて、実はお客さんの多くはオンラインで仕事をしているいわゆるノマドの人たちと、年金で生活をしているリタイア層。彼らがチェンマイを選んでいる大きな理由が、穏やかな気候と、ゆったりとした時間の流れだといいます。
カフェで読書をしたりおしゃべりする人もいれば、ウィービングをする人も
チェンマイの「穏やかな気候」と「ゆったりとした時間の流れ」。この両方を最大限に感じ取れるのがカフェの存在です。
チェンマイ市内の人口は13万人ほど。決して多くはないので、カフェが混むことはさほどありません。本を読んだり、仕事をしたり、友達同士でおしゃべりしたりとみんな思い思いに過ごしていて、私は、朝からこうしてカフェのテラス席でウィービングをすることもあります。
暖かくて、ガヤガヤしていなくて、誰にも邪魔されることなくゆったりと自分の時間を過ごすことができるので、カフェは本来こうあるべきだよなとしみじみ感じます。
屋台から生まれた、甘い甘いタイのコーヒー
チェンマイからさらに北に位置するチェンライ県はコーヒー豆の名産地です。30年ほど前からタイ王室の協力のもと品質改良が行われ、今では国際的にもコーヒーの産地として知られるようになりました。
タイでは欧米スタイルのコーヒーが定着する前から、「カフェ・ボーラン」と呼ばれる屋台コーヒーが街のいたるところで売られていました。コンデンスミルクたっぷりの甘いコーヒーは、一度飲むとやみつきになります。
近年ではそんな屋台コーヒーに代わって、エスプレッソとフィルターコーヒーがメインの西洋スタイルのカフェが増えてきました。屋台コーヒーとは淹れ方が異なりますが、それでも甘いコーヒーを出す文化はしっかりと受け継がれていて、コーヒーや紅茶は何も言わなければ砂糖がたっぷり入って提供されます。タイではブラックコーヒーを飲むことは稀なので、「ミルクなし」と頼んでも必ず砂糖を入れるか聞かれますし、ココアも砂糖ありと砂糖なしが選べます。
こだわりあふれる、ゆったりとていねいに淹れるコーヒー
チェンマイのカフェは本当に手が込んでいます。店員さんが1杯ずつ丁寧に淹れるドリンクを、お客さんはゆったりと座って待ちます。1杯淹れるのに10分待つこともありますが、だらだら作っているわけではありません。できあがったドリンクからは完成度への強いこだわりを感じます。
また、冷たいドリンクにはわざわざ別に泡立てたミルクをコーヒーに乗せるので、テイクアウトの時には、フラペチーノのようなドーム型のフタで提供されます。
チェーン店よりも個人経営のカフェが多く、カップにはオリジナルロゴのステッカーが貼られていたり、遊び心あるデザインが施されていたり。パッケージにもお店の個性が滲み出ます。
インテリアの参考にしたい、ぬくもりを感じる木製家具
どのカフェもインテリアには独自のこだわりが見られます。アンティークミシン台がテーブルになっていたり、エアープランツがダイナミックにぶら下がっていたりと、カフェのコンセプトに合わせた個性的なインテリアが特徴です。
チェンマイのカフェの家具は8割方が木製。アンティーク家具をリサイクルしたものや、日本ではあまり見かけないモダンなデザインのものまであります。
一体この素敵な家具たちはどこからやってくるのだろうと興味が湧き調べてみたら、チェンマイの中心から車で30分ほど離れたところに、「バーンタワイ」という、木製品の製造と卸売、家具のオーダーメイドなどを行なっている村があることがわかりました。
こうしたものづくりが近くで行われているからこそ、チェンマイにはそれぞれの個性がありながらもくつろげるような雰囲気のカフェがたくさんあるのだなと納得しました。
懐かしさと今っぽさが混在する、居心地のよい空間
実はチェンマイは「混在の街」とも呼ばれています。昔と今、外国文化とタイ文化をうまく融合させ、それぞれの魅力を見事に表現しているのです。
チェンマイのカフェには実にその魅力がつまっていて、古き良きものと今の時代らしさを自然な形で組み合わせています。
自然の風合いや質感を残した素朴な雰囲気のことを、英語で”Rustic(ラスティック)”と言います。チェンマイのカフェはまさにラスティックな空間が街の存在と共鳴していて、とても居心地がいいのです。
今後もチェンマイのカフェ文化がタイの人々の生活にもっと溶け込んで、のんびりと発展していってくれたらいいな、と思います。