一年を通して様々な行事とそれを演出するにふさわしい花材がありますが、その中でもお正月の花というのは特別厳かな感じがします。
それは私たちの祖先が、ただ単に一年の始まりを迎えるからという理由ではなく、花材一つ一つに、また、それらを用いて活けたいけばなに、自然への畏敬の念、ご先祖様への感謝、子孫繁栄、五穀豊穣など様々な想いや願いを込めてきたからだと思います。
ここまで読んだ方はいけばなは堅苦しい、決まり事があって面倒な感じがするとお思いではないでしょうか?
確かに日本の伝統文化であるいけばなには流派ごとに型や決まり事があります。しかし、近年はフラワーアレンジメントと融合して伝統的な型に加えてフリースタイルというのもあります。
今回は、お正月を迎えるに当り、いけばなを手軽に楽しんでいただけるアイデアと使われる花材の意味についてご紹介しましょう。
華やかにお正月を彩る、いけばなのアイデア
材料
- 直径15cm位の小鉢のような花器(なければ食器でも可)
- 剣山
- 花鋏(なければキッチンバサミで可)
- 花材(松、南天の葉と実、デンファレ、オンシジューム、菊)
活け方
※流派の基本の型ではなく、フリースタイルで活けます。
- 花器の中央に剣山を置き、松を剣山の奥に挿します。
- 1.の松の手前と少し左手前にデンファレを挿します。花を挿すときは花が下を向かないように、茎を挿す向きを注意します。デンファレのように花がたくさんついているものは、先端の花が下を向かないようにします。
- 松の手前から少し右に流れるように南天の実を挿します。
- 南天の実の前に菊、右側に南天の葉を挿し、黄色を添える為にオンシジュームを入れます。黄色の小菊やその他の花でも構いません。花が上を向くように挿し、お辞儀をした状態にならないよう注意します。
- 4.のままでも場所を取らないいけばなになりますし、このように左側に南天の葉を入れても良いでしょう。
お正月のいけばなに使われる花材と意味
お正月花に使われる花材の多くは皆理由があって縁起が良いとされています。代表的な花材は松、竹、梅に加えて、その他の早春の花材とその意味もご紹介します。また、蘭やバラなどは洋の花ですが、華やかな雰囲気を出せるのでよく使われます。
代表的な早春の花材の意味
松(黒松、赤松、大王松、値引松、五葉松): 神の天下りを待つ木、不老長寿
門松: 神の依代(代理の意)
竹: 繁栄
梅: 出世(早春に他のどの花より先に咲くため)、香りを楽しむ、悪霊を払う、紅白の色
稲: 実り
柳: 生命力
菊: 不老長寿
椿: 春の木と書く
南天: 難を転ずる
千両・万両: 昔の貨幣単位
うらじろ(裏が白く、シダに似ている): 長命、夫婦円満
ゆずり葉: 家系をのちの世に譲る
だいだい: 家が代々繁栄
花材:若松、鉄砲ユリ、蘭(モカラ)、千両、水引
お正月花を活ける時期
お正月花はクリスマスが終わった12月26日~28日くらいに飾るのが理想です。1月7日までが松の内と言われており、1月8日に門松やしめ飾りなどは外しますが、お正月のお花はとても長持ちします。2~3週間は持ちますので、7日が過ぎたらそれまで松を長く使い、主にしていたのを、短く切って主役を松以外に変えて活け直してみると良いでしょう。
応用編・松とデンファレだけで活けるアイデア
お正月花だからといって豪華にしなければいけない訳ではありません。帰省するなどでお正月あまり家にいない場合でも持ちの良い松とデンファレだけで活けて見てはいかがでしょうか。こちらはパステルカラーの水引を加えています。
花材: 若松、デンファレ、水引
喪中の時の正月花
喪中の時は松を除いた以下のような花材で活けたり、早春の花を活けて新年を迎えてはいかがでしょうか。
スイセン、小菊
スイセンは紐で束ねてから投入花器に挿しています。
雲竜柳、フリージア、バラ
柳の枝の自然の流れはいけばなに趣を出してくれます。バラは葉が多すぎないように2枚ほど残して、あとはカットします。
花材: レッドウィロー、フリージア、カサブランカ、千両
いけばなはそれがあるだけで、それが飾られている部屋や空間そのものの雰囲気を丸ごと変えてしまう力があります。気負わず、まずは少ない花材から試してみてください。