カラフルなブラジルの古都サルバドール
ブラジル一人旅最初の目的地はサルバドール(現地ではバイーアと呼ばれています)。1549年にポルトガル人が入植してから、1763年までポルトガル領ブラジルの最初の首都だった街です。カラフルなコロニアル様式の建物が現在でも残っており、1985年には世界文化遺産に指定されました。
カラフルなオールドタウンから南に行くと爽やかなバーハ海岸があり、そこにはサルバドールのもう一つのシンボルがあります。1598年に建てられたバーハ要塞です。現在は灯台・博物館になっていますが、戦争中は敵からブラジルの首都を守る役割をしていたものです。
空港からホテルに行く途中、タクシードライバーさんがバーハ要塞を案内してくれたのですが、タクシーの中にバックパックや荷物が入っていたので、置き引きあわないかと私は気が気じゃありませんでした。その証拠に、この斜めな写真!私の動揺が現れています…。
でも結局、何も盗まれませんでしたよ!
街角で見られるカポエイラとブラジル楽器
サルバドールの街角ではカポエイラのパフォーマンスが見られます。カポエイラとは、1500年代にポルトガルがブラジルを植民地化した後、アフリカから連れてこられた奴隷がダンスをしているふりをして訓練した武術です。
ステップはサンバに似ていて、現在では、武術、ダンス、エクササイズなど様々な目的で楽しまれている独特の文化です。直接相手に技を当てることをせず、技のコントロールといったテクニックが評価されるため、体格や性別に関わらず楽しめます。
カポエイラの技は2人で行いますが、周りには楽器を演奏しながらリズムを取っている人たちもいて、素人が見るとストリートダンスのバトルにも見えます。
カポエイラで使われる楽器はしばしばブラジル音楽でも使われています。旅の間、それらの楽器演奏をしている人をレストランやバーなどあちこちで見かけました。
私はブラジル音楽が大好きなので、カポエイラの楽器にずっと興味がありました。特にビリンバウという楽器。弓矢を棒でたたき音を鳴らすというシンプルな構造で、音を共鳴させるために、中をくりぬいたひょうたんがつけてあります。音程は、石やコインを使って変化させます。とても神聖な響きがして、ビリンバウを初めて聴いた時からずっと実物に触れてみたいと思っていました。
ペロウリーニョ広場近くの雑貨ショップとビリンバウお兄さん
これはマイケルジャクソンの” They Don’t Care About Us”のミュージックビデオのロケ地としても知られている、ペロウリーニョ広場。この場所こそが、カラフルなサルバドールの顔です。
このエリアへと続くメインストリートには、アクセサリーやお土産、ブラジルの打楽器、生地など様々なお店が立ち並んでいます。
その中の1つに手作り雑貨のショップがあったので立ち寄りました。ココナッツやフェザー、レザー、シェル、天然石など、自然素材で作られたものがほとんどで、手作りのぬくもりも感じられるカラフルなブラジル雑貨。
そこのアクセサリーをハンドメイドしているというお兄さんが接客をしてくれました。
言葉はなかなか通じなかったのですが、私はブラジル音楽が大好きでボサノババンドにも入っているということ、サルバドールでは是非カポエイラの楽器ビリンバウに触れてみたいということをなんとか伝えました。
「ビリンバウ?ここにあるよ!」
そう言ってお兄さんは、奥の方からビリンバウを出してきたのです。お兄さんは実はカポエイラの先生でもあり演奏もできるということで、その場で演奏してくれました!
憧れていた神聖な倍音の響きは、じわじわ頭の芯に染み込んでいきました。そこでお兄さんから小さな太鼓を渡され、パーカッションのセッションが始まりました。観光客が通り過ぎながら見ていきます。私たちが奏でるリズムに合わせて小躍りしていく人もいます。
そうそう、このリズムを感じるためにブラジルに来たの!ブラジルに来て良かった!
店内アクシデントとビリンバウお兄さんの優しさ
気に入った雑貨やアクセサリーがたくさんあったので、それらを私は次々にお会計に持っていきました。その中でも1番気に入ったココナッツでできたピアス。「かわいい!」と耳にあてて鏡を見ようとしたところ、パリン…ひゃー!
ココナッツピアスが私の指から滑り落ち、床で割れてしまったのです。
「ごめんなさい!この分は買い取るね!」
と言いましたが、お兄さんは
「大丈夫、気にしないで。落ちたら壊れるってことは、これは弱いココナッツだったってことだから、売るわけにいかない。」
と言って、他のココナッツ製ピアスも次々と床に落としていったのです。割れてしまったピアスも割れなかったピアスもありました。
私は「そんなことしなくていいのに!もったいない!」という気持ちで見守る事しかできません。
お兄さんはそこから、割れなかったペアを拾いあげ、
「これは割れなかったから、強いペアだよ。これでいいかな?」
と言いました。
「…オブリガーダ(ありがとう)!!」
ビリンバウお兄さんの教え
ブラジルでめいいっぱいカラフルな街や雑貨に触れて、帰国後はたくさん色鮮やかなアクセサリーを作ったのを覚えています。
当時私はハンドメイドのアクセサリーを地元のカフェで販売させてもらっていました。そのカフェでランチをしていた時のことです。お子さん連れのグループが席から立ち上がり、雑貨コーナーを見ていました。
おてんばな雰囲気の、3歳くらいの女の子。私が作った天然石ブレスレットを手にとり、振り回し、あぶなっかしいなと思っているうちにブレスレットが床に落下。ローズクオーツとターコイズのビーズが床ではねて、店内にばらばら、ごろごろと散らばりました。それを見て1番真っ青になったのは子供のお母さんではなく私だったと思います。
でも、その時ビリンバウお兄さんのことを思い出し、気持ちがふっと軽くなったのです。
「子供が振り回して落としたら壊れるってことは、売るべき品ではなかったんだ。」
時間をかけてデザインし作り上げたものはもちろん愛着があるし、目の前で壊れたらショックです。でも、それを買ってつけてくれる人がハッピーになれなければ意味がないのです。誰かに買われてから1日で壊れるより、買われる前に弱いことがわかって良かった。
そう思わせてくれたのは、ビリンバウお兄さんのおかげです。
ちなみにこの写真は、ビリンバウお兄さんから買ったブラジル打楽器のカシシとクイーカ。クイーカは本番で活躍する前に練習中に壊れてしまいましたが、カシシは今も現役です!