日本ではあまり知られていませんが、オランダは編み物や刺繍、縫物など手芸の盛んな国です。
何でも自分で作ったり直したりするDIY精神を持った人が多いこと、プロテスタントの質素倹約の考え方が根付いていること、冬の寒さが厳しく家で過ごす時間が長いことなどが、オランダで手芸が盛んな理由かなと感じています。
オランダで暮らす中で気づいた、オランダならではの手芸事情をいくつかご紹介します。
野菜の隣にボタン?マーケットでも手芸用品が
オランダの人にとって手芸がとても身近な存在だということを感じる場として、定期的に街中で開かれるマーケットがあります。マーケットとは青空市のようなもので、通常新鮮な野菜や果物、肉、魚などが売られているのですが、オランダのマーケットでは、生鮮食品と隣り合って手芸用品屋さんも店を出しています。
野菜や果物を買ったお店の隣で、ボタンや布などの手芸用品も物色する、というのがオランダでよく見られるマーケットの光景なのです。
写真のような車の荷台に布をいっぱいに詰めて、各街で行われるマーケットを巡回している手芸屋さんも多く見かけます。
もちろんオランダの街中にも布や手芸小物を扱う店が数多くあり、日本のようなチェーン店だけでなく個人経営の手芸用品店の姿も目立ちます。中には手芸のワークショップを開催している店もあり、平日の夜遅くまでたくさんの人でにぎわっています。
オランダの可愛い手芸用品のディスプレイ
オランダの手芸店はディスプレイも見どころのひとつです。一見無造作に並べられているようでも、ヴィンテージの瓶や陶器を入れ物に使っていたり、レトロなトランクをショーケース代わりにしていたりと、ヨーロッパらしいセンスを垣間見ることができます。
夏の間オランダ各地で行われる蚤の市やアンティーク市でも、手芸用品のブースをあちこちで見掛けます。どの店も工夫を凝らしたディスプレイで、眺めているだけでも楽しめますよ。
日本ではなかなか手に入らないヴィンテージのボタンやレースなども、破格の値段で見つけることができるのでおススメです。
日本でも人気のリサイクル編み糸『Zpagetti(ズパゲッティ)』
編み物好きの人は『Zpagetti(ズパゲッティ)』という編み糸の名前をきいたことがあるかもしれません。
実はこれ、Hoookedというオランダのメーカーの製品なのです。日本でもインスタグラムで話題となり、各ショップで売り切れ続出だった時期もあるほどの人気です。
ズパゲッティとは、Tシャツなどの製造工程で出る端切れを集めて作った極太の編み糸です。通常なら廃棄されてしまう端切れ布を編み糸に変えるというのは、オランダ人女性ヘイシュ・モーシス氏のアイディアで、リサイクル文化の根付いたオランダならではの製品と言えるでしょう。
ズパゲッティにはTシャツ由来ならではの多様な色やユニークな柄が揃い、簡単にお洒落なアイテムを作ることができます。#zpagetti でインスタグラムを検索すると、世界各国のズパゲッティ愛好家が作ったお洒落で実用的な作品がたくさん出てきます。
ズパゲッティの素材はコットンなので肌触りが良く、洗濯も簡単です。極太糸なので、短時間でザクザク編めるのも人気の秘訣で、初心者にもおススメとのことです。
このようにオランダでは、昔から編み物や裁縫が人々の日常生活に根付いていて、最近ではズパゲッティのような時代の先端を行く手芸用品も作り出しています。オランダに根付いている「自分で出来るものは自分で作る」「人とは違うオリジナリティのあるものを身に着けたい」という考え方が、手芸大国オランダを作り上げたと言えるでしょう。
もしオランダを訪れる機会があったら、ぜひ手芸用品店を覗いてみてください。手芸という窓から、オランダ人の素顔や生活ぶりが見えてくるかもしれません。